【峰竜太】グランプリ2度目の制覇 〜2020年振り返りと今後は〜

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コラム
峰竜太

やっぱり強い。再確認されられる1年であった。

今年は峰竜太の年と言っても過言ではない。SG2勝、G1を3勝、G2の1勝含むV14。年末に残り1節、地元の年末シリーズが残っているが優勝しても僅かに野中和夫氏の年間V16には届かなかった。

それでも近年振り返っても今年の峰竜太選手の強さは比べ物にならないほど強かった。 昨年10月の大村SGダービーで準優勝戦でまさかのフライング。
しかし大レースでの準優勝戦や優勝戦でのフライングは初めてではない。優勝戦ではヤングダービーを含む4回、SG準優勝戦では2回のフライングがある。
もちろんペナルティで記念戦線から離脱ということも経験している。その全てを積み上げて力に変えてきた。

峰竜太2020年グランプリ制覇への軌跡

元日の地元正月シリーズで優勝。記念戦線復帰の3月まで5回の優勝を果たした。
その期間で今まで優勝のない蒲郡で予選トップとなったが、準優勝戦でまさかの瀬尾ロケット(瀬尾達也選手のまくり)を浴びる。大村でも優勝を期待されたが、節間2回の不良航法と優出はならなかった。これらを挟みながら連続しての優出漏れが無かったというのは誰にも真似が出来ないことである。

3月末に尼崎周年で記念戦線に復帰すると、すぐさま予選トップで王道の逃げ連発とし優勝をあっさりとかっさらう。

4月中旬の蒲郡周年ではやや伸びの足らないモーターであったが再び予選トップから今度は優出とし、ついに初優勝かと思われた。しかし、そうは簡単に優勝できないのが峰竜太と蒲郡の間柄である。湯川浩司の強烈すぎるまくりを受けてあえなく1マークで立ち往生。ところどころに課題を残しつつも着々と芦屋周年、第2回ボートレース甲子園と優勝を積み上げていく。

迎えた鳴門のSG·オーシャンカップ。ドリーム2着。6枠の2戦目を3着としながら3戦目で6着となる。3日目から巻き返し予選は4位。準優でも2枠から手堅く2着を確保し4枠での登場となった。本番はやや機力の弱い茅原悠紀選手の3カド。しかしこれも峰選手は自身の想定に入っていた。

トップスタートの茅原選手が仕掛けると渾身の差しをブイ際に入れた。競り合う内を3艇を後目にSG3勝目。SG·G1では1.2コースからの優勝しかなかっただけに本人も「どこからでも勝てる自信がついた」と話していた。その後も初SG戴冠の地·丸亀の周年を.01のスタートで優勝と年間最多優勝は現実味を帯びてきたのだった。

しかし、11月からは急激にリズムが悪化した。常滑周年で低調機で途中帰郷すると、次の津周年では予選をフルに戦った中で実に3年ぶりとなる予選落ちを経験。最悪とも言えるリズムの中で迎えたチャレンジカップだが、不良航法による減点が響き連続での予選落ち。BBCトーナメントでも準決勝で敗退とリズムに暗雲が立ち込めた。この時点で「峰のグランプリ制覇はない」と思ったファンもいたのかもしれない。

2020年グランプリの舞台は平和島。もちろん峰選手は賞金1位で3日目は1枠での登場。平和島といえば様々な要因で1枠が全国的に見ても弱い水面だ。2.3戦目の枠番は抽選によって決められるだけに、初戦の1枠は何がなんでも逃げなくてはならない。

そんなプレッシャーのかかるイン戦で今年の峰選手のグランプリは始まった。 スタートは全艇が0台の踏み込み。スリット後にはセンターの深谷知博選手と白井英治選手が伸ばした。先攻めの深谷選手のまくり炸裂かと思った瞬間に峰選手は外に張り気味の旋回。深谷選手に半艇身差を取って2マークを先取り。

内側の峰選手が同体以上で先に回れたときに外の選手が勝つ可能性は限りなく低い。流石の旋回力であっという間に突き放して逃げ切った。初戦のインタビューでは1マークの差させずまくらせずの旋回を冷静にタイミングよく出来たと話していた。

それと同時に本人もここ最近の流れが悪かったことは自覚していることも話した。ただ、「この(トライアル2nd初戦の)1走で全ての流れを掴んだと自分は思っている」と優勝を見据えて話している。これが現実となるとはまだこのとき峰選手のファン以外ではそれほど信じきれてなかったであろう。

4日目、トライアル2nd第2戦の枠順で完全に峰選手に流れが向いてきた。賞金ランク2位で初戦逃げて勝った毒島誠選手が5枠である一方、峰選手は1枠を引きガッツポーズ。
まさに風向きが変わった。さらに追い風が吹いた。同じ組で脅威となる伸び抜群の白井英治選手が5枠となる。スリット脚は抜群なだけに、少しでも白井選手が遠い位置にいることが逃げやすい環境となるのだ。

レースはやはり白井選手が舟を伸ばしてきたが、センターから吉川元浩選手の先まくり。これによってあっさりとトライアル2nd2戦目も逃げ切ってしまう。そしてこのレース終了後、かつてないような奇跡が起きている。 トライアルは1着から順に10.9.7.6.5.4点というように特典が割り振られている。

2戦続けて逃げた峰竜太選手は2勝を挙げて20点。一方の2位以下は1勝を挙げた毒島選手と西山貴浩選手も含めて全員が14点以下となっていた。仮に毒島選手と西山選手がどちらかが3日目で1着、峰選手が6着となっても得点は24点で着も2勝と6着1回となる。

しかし賞金ランク1位で選出となっている峰竜太選手が得点率で2位以下とは2日目の時点でならないこととなる。前代未聞とも言える2戦目の時点で賞金王決定戦1枠がほぼ決まったのだった。(唯一、不完走や事故だけが例外。)これにはネット上でもかなりザワつく。

もちろん峰選手としても完走さえすればいいのだから2日かけてファイナルの1枠へ気持ちを整えるということもできたのかもしれない。流れを掴んだと言っていた翌日に起きたこの事象が、峰竜太2度目のグランプリ制覇に大きく近づけたとも言えるのでは無いだろうか。

トライアル2nd3日目の峰選手は6着。道中で舳先が一瞬浮き上がりヒヤッとするシーンもあって、それからは無理な追い上げをしていないようにも見えた。
優勝戦1枠はもちろん峰竜太選手。2枠にくじ運もさることながら、逃げて2勝を挙げたお祭り男の西山貴浩選手。3枠にはバランスが取れた機力で堅実に上がってきた寺田祥選手。くせ者の新田雄史選手と平本真之選手が4.5枠。そしてグランプリに戻ってきた王者·松井繁選手が6枠となった。

特に戦前の注目は6枠に松井選手となり、どこまで前づけでコースを入り込むか。カドに誰が入るのか、それともオールスローなのか。どうしても内よりが深くなるのは間違いないだけに最後の最後に最大のプレッシャーを感じる場面が訪れた。

迎えた2020年12月20日。レースは序盤からまくりも決まって平和島らしい結果に。シリーズの優勝戦ではインの池田浩二選手が膨らみ、さらに同支部の深川真二選手が優勝とさらなる重圧が峰選手に降りかかる。ファンの期待もかなり高く、峰選手が敗れるだけでほとんどが万舟という圧倒的人気に推された。

迎えた12Rの優勝戦。やはり松井繁選手が動きを見せて4コースのスローに。1236/45とスタート方向に舳先が向いた。スロー4艇は100ポールからの起こし。もしセンター勢がへこんだら危ない。ファンですら心配となる。しかし6選手の凄まじい気迫を目の当たりとすることになった。

グランプリ優勝戦では万が一フライングを切ると1年のSG除外に半年の記念レース辞退というとてつもなく重いペナルティがある。しかし、それをものともしない全艇が0台の踏み込みを見せた。中でもトップスタートはインの峰選手。脅威の.01スタートだ。

スリット後、3コースの寺田選手が舳先を覗かせ、2コースの西山選手がやや下がる。まくり差しの可能性もあったが、初戦同様に全てをシャットアウトした。バック中間では5.6艇身とリードをグングンひらいていく。

機力をさらに仕上げ、コース取り、スタート、直前のシリーズ優勝戦からの重圧、そして何よりファンからの期待。全てを受けて峰竜太選手は強くなった。ゴールの瞬間にはお馴染みのアロハポーズも見せていたが、ピットに戻ると目には涙を浮かべていた。

それだけではない。ウイニングランでも多く目元を拭う姿をることができた。 「今年終盤に期待に応えられないことがあったので、僕もここまでかと思っていたけど、一番大きいところがとれたので帳消しですね」とピットに戻った直後には喜んだ。

その他にも優勝後には「条件的に負けてもおかしくないがそれを言い訳にしたくなかった」 と話し、進入に動きが必至となる6枠に松井繁選手という状況にも「自分がさらに強くなるチャンス」と言い聞かせ臨んでいた事も明らかにした。

ここ最近、峰選手はインタビューで「世界中から応援をお願いします。」と言うことが多い。今や日本の競艇界では必要不可欠なトップ選手なだけに、峰選手のファンのみならず、日本を飛び出し世界からも注目される存在かもしれない。

だからこそ世界中からの応援を本人も求めているはずだ。 これで賞金王は2度目の制覇。今年は賞金、勝率、最多勝利、最優秀選手と4冠はほぼ確実。「残りは女子と最優秀新人となるだけに、自分が全部取れるものを取って、表彰式は人を少なくしてソーシャルディスタンスをとれるようにします。」といった冗談まじりの言葉まで飛び出した。

優出が止まらないという最高の時期もあり、苦悩の時期もあった2020年。そして最後にはグランプリ優勝と確かに波はあった。波乗りを得意とする峰選手らしいといえばらしいのかもしれない。惜しくも届かなかった年間最多優勝記録は一般戦が多かった今年だからこそ近づけた記録かもしれない。

それでも峰選手だからこそ、記念続きでも何かを起こしてくれそうな期待すらある。万が一それが起きれば3億円レーサーと話していたことまで現実としてしまうのではないだろうか。もちろん今までのようにSGで優出を逃すことはあるだろう。

しかし、この強さが自信となり、さらにプレッシャーも力と変えていけば年間のSG全てで優出ということすら可能なのではないか。2021年の峰竜太選手はどんな夢を私たちに見せてくれるのだろうか。 最後に、峰選手から多くの人が学ぶべきことがある。

初戦を終えてプレッシャーが自分を強くさせてくれた。 2戦目でプレッシャーが自分を押してくれている。 優勝後にも6枠松井選手は強くなるチャンス。 という言葉が出てきている。 YouTubeチャンネルでもプレッシャーとの向き合い方の質問に対して「緊張するというのは悪いことじゃない。それだけ真剣に物事と向き合っている。この緊張を乗り越えたら自分は成長出来るとポジティブに考えよう。」と話していた。

これは特に若い人にとって大切な考え方かもしれない。過去に蒲郡のSG·ボートレースメモリアルでは丁寧すぎる2周1マークで篠崎元志選手に逆転を許したという失敗もあったように、過去に重圧に苦しんできた峰選手。それから数年でSGも複数回獲得し「緊張」の扱い方に変化が出てきたのだろう。緊張は真剣に向き合っている。非常に説得力のある言葉だ。

峰竜太

峰竜太

登録番号4320。佐賀支部。学生時代から全国レベルのヨット選手として水上で活躍。その体幹のバランスで強烈な旋回力を武器に今やボート界の頂点に。SG通算4回、通算77回の優勝。2020年にはSG鳴門オーシャンカップとSG平和島グランプリで優勝。レースのない期間は自身のYouTubeチャンネルでゲーム配信を昼夜問わず頻繁にライブ配信している。

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